総合技術研究WG

総合技術研究WGレポート

国産ヒノキ材の耐震シェルターを歴史あるまちの地域活動の拠点に

2024年4月30日
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JR東海道本線草薙駅から徒歩3 分ほどの好立地にある、草薙西自治会の自治会館別館。区画整理の際、他の場所から行政代執行で現在地に移動させられた。竣工年等の記録は一切残っていなかった。
耐力壁で支える構造のシェルターと異なり、開口部が大きくとれるため、設置後も二間続きの和室を今までと同じように襖を開いた形で使い続けることができる。

一般社団法人耐震住宅100%実行委員会は地域コミュニティ耐震化キャンペーンの第4 弾として、静岡市清水区・草薙西地区自治会館別館に「木質耐震シェルター70K」を寄贈しました。今回は新たに採用された岡山県産ヒノキの集成材を用いています。

地域を元気にする活動拠点を地震から命を守れる建物に

JR東海道本線の草薙駅(静岡市清水区)周辺は若者の姿が目立ちます。理由はこの地域に静岡県立大学草薙キャンパス、静岡サレジオ小・中・高等学校、静岡県立美術館、静岡県中央図書館などの文化教育施設が集まっているからです。さらに、三種の神器のひとつとして知られる「草薙剣」の名の由来とされる草薙神社があり、七五三や初詣などの季節行事の際には多くの参拝客が訪れます。

草薙のそうした活気ある雰囲気を支えているのは、商店会と自治会が中心になって設立したまちづくり組織「一般社団法人草薙カルテッド」です。JR草薙駅の改修を契機に2013年から活動を始め(2017年に法人化)、2018年にはUDC草薙としての活動も開始、産学官民の 連携で活動実績を積み上げてきています。

草薙西地区の自治会長、草薙カルテッドの共同代表をつとめる花崎年員さん(右)と株式会社アキヤマ代表取締役、秋山浩史さん(左)。静岡県の補助金が得られれば、費用は6 畳用で90万円以内(工事費込み)に抑えられる。秋山さんは「家族がお金を出し合い敬老の日、母の日などのプレゼントにも」とアイディアを膨らませている。

共同代表をつとめる花崎年員さんは「包括支援のことでも、大学生にアイディアを募りたい人の相談でも、地域の人の相談はなんでも受けます」と間口の広さを誇ります。ちなみに「カルテッド(cul+ed)」はカルチャー(culture)とエデュケーション(education)からの造語。花崎さんは草薙西自治会長を兼ね、自治会でも老若男女、在住年数などの分け隔てなく、誰もが地域で楽しく過ごせるよう、子ども食堂の開設やイベント開催等で交流促進を図ってきました。

今回、一般社団法人耐震住宅100%実行委員会が地域コミュニティ耐震化キャンペーンの第4弾として「木質耐震シェルター70」を寄贈したのは、その活動拠点のひとつである草薙西自治会館別館です。

和室から玄関を見る。入り口部分が柱で狭くなっているが、通行にはまったく問題はない。国産ヒノキの集成材なので竣工時にはヒノキの清々しい香りが強く漂っていたという。

木造平屋で、花崎さんによると「40~50年前、区画整理で所有者不明のまま行政代執行で移されてきた」という。内部には二間続きの和室と簡単なキッチンがあり、玄関側の和室には薬師如来像が鎮座する、いささか不思議な間取りは、この建物が何十年も前に廃寺になった寺に由来するためとのこと。行政は、移築はしたものの所有者不明であったため手をつけられず、代わりに自治会が所有権を持つ人がいないことを明らかにし、裁判所に申請して、この土地と建物の権利を得ました。しかし自治会には建物の建て替え資金はなく、最低限の補修と白アリ駆除を行っただけで使い始めました。

シェルターの梁と天井との納まり。既存の天井を見せることで、圧迫感のない空間となっている。
シェルターの柱と床( 畳) の納まり。土台を床下に隠している為、段差のないすっきりとした納まりとなっている。