
2024年1月1日に石川県能登半島を襲った震災は、気象庁によって「令和6年能登半島地震」と名付けられました。しかし、その被害は名称がもたらすイメージを遥かに超えて広がり、富山県を挟んで新潟県という遠方にまで及びました。新潟県越後曽根に在住の内藤さんは、能登半島地震によって、生まれて初めて、自宅の耐震性能の危うさに危機感を抱きます。その恐怖を安心感に変えてくれたのが、耐震住宅100%実行委員会が寄贈した「木質耐震シェルター70K」でした。
新潟県中越沖地震にも耐えた家が「ミシッと鳴った」
生まれも育ちも新潟県の内藤さんは、1964年、東京オリンピックの年に起きた記録的な新潟地震(マグニチュード7.5)も、2007年の新潟県中越沖地震(マグニチュード6.8)も経験しています。しかし内藤さんにとって、それらの地震と、今回の能登半島地震は決定的に異なるものでした。
「揺れたときには、廊下に出ていたんですけど、そのときに自分の家が『ミシッ』と鳴ったんです。これまでそんな音は聞いたことがなかった。それに、最近の2016年の熊本地震のときには、しばらく後から来た揺れの方が本震だったでしょう?そんなこともあって、もう心配で心配で。何にもしなかったら、また地震が来た時にこの家はどうなるんだろう、これは危ないなって」。
近所の神社の手水舎は完全に倒壊し、西区、西蒲区、女池といった、内藤さんにとって身近な土地の数々にも、地滑りや液状化といった被害が出ていました。
進まない耐震診断・耐震設計
さかのぼること、2023年。建築金物の卸売業の会社を退職された内藤さんは、「何かと測定することが趣味」というご自身の目でもってあらためて自宅を見てみたところ、屋根や玄関先など、直したいところがあちこち目についたため、耐震も兼ねてリフォームを依頼しようと思い立ちます。ところが、「どの業者さんも『耐震改修しても、(上部構造評点[1] )1.0なんて数値にする必要はありません』『そんな数値は出ませんよ』というんですね。そんなものなのかな、と思っていたところに、1月1日の揺れがきたわけです」。
そこで内藤さんは急遽、耐震診断士に、本格的に家の耐震診断を依頼します。そしてそのまま耐震設計へと進めてくれるよう依頼しようとしたところ、「今回の能登の地震で、あちこちから引き合いがきているので」と、多忙を理由に断られ、途方に暮れてしまいます。
[1] 上部構造評点とは、木造住宅の耐震性を示す指標。ここで「上部」とは、建物の基礎より上、つまり地面状に出ている部分すべてを指す。上部構造評点が1.0の場合、震度6強レベルの地震に耐えられることを示す。数値が少なければ耐震性が低く、数値が多ければ耐震性が高い。

耐震への想いがつないだ、工務店AMAZING COMPANY(旧AC15)との縁
こうして一度は耐震補強について考えた内藤さんですが、「どの工法が良いのか分からない」「費用が高額で手が出ない」といった課題にも直面し、なかなか行動に移せずにいました。さらに、家の構造や築年数によっては補強が複雑になり、大掛かりな工事が必要になるケースもあるため、踏み切るには大きな決断が求められます。加えて、補助金の申請手続きや工事会社選びの難しさも、高いハードルとなる要因でした。
そんな中、内藤さんにとって幸運なことに、娘さんのサポートで耐震建築に詳しい地元の工務店「AMAZING COMPANY(旧AC15)」とつながることができたのです。
「内藤さんが耐震のことでお悩みだと、娘さんから弊社の社長であるアルコビに相談がありました」と語るのは、営業担当の篠原さんです。
「お話を伺う中で、内藤さんが抱える不安や課題をじっくりとお聞きしました。そこで弊社としてもその状態をなんとか解決して差し上げたいと思い、弊社が会員となっている、一般社団法人耐震住宅100%実行委員会の事務局へと支援を願い出たのです。するとその想いが伝わり、被災地支援の一環として、木質耐震シェルターを内藤さんのお宅へ寄贈できる運びになりました」。
内藤さん自身も、地震への備えについて以前から関心を持ち、インターネットなどを通じて耐震技術や工法について学んでいました。
「今回の耐震診断を受ける前から、耐震についての情報をいろいろ調べていました。新築するなら厳密な構造計算を用いた建築方法で建てたいとは思っていたんですが、まさかそういったことがベースに開発された耐震シェルターがあるなんて。今回AMAZING COMPANY(旧AC15)さんのような耐震に精通している工務店に相談できたのは本当に心強かったですね」と内藤さんは話します。

木質耐震シェルターで守る、日常の暮らし
内藤さんによると、2階に寝室があるものの、奥様が足を悪くされており、階段の昇り降りが難しく、やむを得ず1階のリビングで寝起きされているとのこと。また息子さんのことも気にされていて、一刻も早く、お二人が安心して過ごせる家にしたいという想いが強く伝わってきました。「そこで、やっぱり木質耐震シェルター70Kがピッタリ!だと思いました」と篠原さん。
一般にシェルターは「非常時に避難するところ」とイメージされていますが、木質耐震シェルター70Kはそれだけではなく、例えばリビングなど普段の空間の耐震性を高め、地震が起きた際も“そこ”にいることが最も安全である場所をつくり出します。普段の居場所をそのまま守ることで、代えがたい普段の暮らしを守ること。そのためデザイン性も考慮されており、あたかも柱や梁をあらわしにしたかのような美しい仕上がりが特徴です。家屋全体を耐震補強することが難しい場合、家の一部を耐震化するという、新たな発想から生まれた木質耐震シェルター70K。ご自宅にお住まいになりながら、1週間程度の施工期間[2] で完成させることができます。
[2] 一般的な場合の施工期間です。建物の状況等に応じて、施工期間が前後することがあります。
施工に立ち会って確信した、木質耐震シェルター70Kの強度
以前より耐震技術に興味のあった内藤さんにとって、木質耐震シェルター70Kの設置プロセスは、たいへん興味深いものでした。 まず基礎のために、リビングの床はいったん全部剥がして、コンクリートの打ち直しから作業が始まります。がっちりと接合金物が取り付けられた土台がコンクリートの四辺に横たえられ、掲げられた梁を平角の柱が支え、集成材によるこれら梁や柱が、金物で強固に接合されていきます。
「基礎が済んで床を貼ってから、シェルター自体は、半日くらいで立ち上がりました。5人がかりの組み立てで、大変な迫力がありましたね」と、内藤さんは語ります。

「奥様がこれからここに寝られるのは安心ですよね。ご家族の反応はいかがですか?」と、篠原さん。「いやー、良かったって言ってます。これはもうね、安心感がちがう。幅400の柱同士がコーナーで接しているでしょう。このコーナーは見事だと思うな」。
完成した木質耐震シェルターは、昔ながらの日本家屋によくある「間口の広さ」という特徴を犠牲にすることなく、これまでの内藤さんの生活スタイルに自然に溶け込むものとなっています。耐震住宅100%実行委員会では、「いつまでも安全・安心に住み続けられる家を、日本に一棟でも増やしていくこと」という理念に基づき、今回、内藤邸に行なったような支援や活動を、今後も継続していきたいと考えています。

AMAZING COMPANY株式会社
〒950-0981 新潟市中央区堀之内50-1
https://www.amazing-company.jp/