What's 耐震

第8回 耐震住宅専用の強い建材はあるの?

2018年11月26日

住宅を建てるときに、構造部材として使う材料は主に次の3種類です。

「鉄」
「コンクリート」
「木」

この3つはそれぞれに特徴を持っています。

構造部材としての鉄の特徴

まず、「鉄」です。鉄を構造躯体として使用する際は、単独で柱や梁に使えるように「鉄骨」として、また、コンクリートと組みあわせるときは「鉄筋」として利用されています。この「鉄」の特徴は「引張強度に強い」「長い材が可能」ということです。また、強度が数値化できるので正しい構造計算が可能という面もあります。さらに鉄骨は「軽量鉄骨」「重量鉄骨」と2種類に分かれます。

「軽量鉄骨」とはその名の通り、薄い鉄板を加工して柱などにした鉄骨です。それに対して「重量鉄骨」は、厚い鉄材をH型などの部材にした鉄骨です。2階建て以下の住宅では「軽量鉄骨」、3階建て以上の住宅や規模の大きいビルやマンションなどには「重量鉄骨」が主に使われています。

また、「木造軸組み工法」の接合部や基礎の柱脚部において、強度が高く計算できる「鉄」を利用した「接合金物」を使うケースも増えています。「強度が計算できる」「長い材料が可能」という長所に比べて、短所は「重い」「錆に弱い」「高価」という点です。

左:軽量鉄骨、右:重量鉄骨

構造部材としてのコンクリートの特徴

次に「コンクリート」ですが、皆さんもご存じのように粉状のセメントを水で固めたものです。コンクリート単体では「圧縮には強い」のですが「引っ張りには弱い」という欠点があります。よって単体で使うことは少なく、前述しましたが「引っ張りに強い」鉄筋と組み合わせた「鉄筋コンクリート」として建築に使う場合がほとんどです。

特徴としては、長所は「強度が計算できる」「耐久性が高い」ですが、短所は「重い」「高コスト」という点が挙げられます。なので、主にビルやマンションなどで利用されており、一般の住宅で使われるケースは非常に少ないようです。また、その特徴を生かして、木造住宅や鉄骨住宅でも基礎部分はこの鉄筋コンクリートが使われています。

構造部材としての木の特徴

最後の「木」は、古くから一般的な日本の住宅に最も多く使われている馴染みの材料です。柱や梁のような角材として使う場合と、合板のような面材として使う場合があります。工法としては2種類あり「木造軸組み工法」では柱材・梁材がメインとなり、「2×4工法」の場合は合板がメインとなります。

木材の最大の長所は、一定の強度がありながらも「軽い」ということがあげられます。これまでのコラムでも解説してきましたが、「地震力」というのは「重さ」に比例します。重い建物であればあるほど地震力が大きくかかってしまうということです。つまり、材料が軽い木材で建てた住宅は、重い「鉄骨」や「鉄筋コンクリート」で建てた住宅よりも地震力も少ないというわけです。そういう意味で「耐震住宅」として適した材料であります。

また、地盤に対する負担も少ないので基礎工事や地盤補強も費用が少なくても良いというメリットもあります。結果、建築費用をトータルに見て「鉄骨」「鉄筋コンクリート」に比べて安価となります。一般的な短所としては、「湿気に弱い」「シロアリに弱い」ということがありますので、その対策はしっかりやっておくべきでしょう。

そして、耐震住宅にとって木材の最大の注意点は、「強度が不明確」ということです。自然に育って、ただ加工されただけの通常の木材は、同じ樹種、太さであってもその強度はバラバラです。鉄骨やコンクリートのように強度を数値で表すことも困難です。これでは正しい構造計算ができません。

構造用集成材

そこで、その欠点を補う最新の木材として知っておいて欲しい材が「構造用集成材」です。これは、ラミナと呼ばれる木材の板を接着剤で人工的に貼り合わせた構造材です。一枚ごとに乾燥させて強度を計ったラミナを適材適所に張り付けることで、同じ強度の部材を実現することができます。また、その強度も「F-330 E-105 」というように数値化できます。数値化できるということは、これまでも解説したように「構造計算」が正しく実践できるということです。

また、太くて長い部材も可能なので、大きな空間をつくる際にも非常に有効です。近年は、幼稚園や保育園、店舗・事務所・倉庫など、これまで鉄骨や鉄筋コンクリートでしか建てられなかった規模の大きい施設建築でも、数多く活用されています。接着剤の耐久性においても、世界的な歴史は100年以上ありますので、もはや心配の必要はないと言えるでしょう。「構造用合板」と呼ばれる合板も同様に強度が数値化されています。面で支えるという特徴を生かして、柱や梁材としての「構造用集成材」との組み合わせで、より正確な構造計算が可能となります。

CLT

余談ですが、「CLT」という厚板を何層にも重ねた板材も近年注目されています。まだ生産量も少なく高価ではありますが、大規模建築の構造用の木材として今後は広まっていく可能性があります。

これらはその製作過程に手間がかかる分だけ、一般の木材と比較すると少々高コストであることが短所ではありますが、構造的な優位性は非常に高い材料です。安心して暮らせる本当の「耐震住宅」を希望されるなら、ぜひ検討してほしい材料だと思います。

「鉄」「コンクリート」「木」の適材適所

「鉄」「コンクリート」「木」と、それぞれ長所短所があります。それぞれの特徴を生かした建築が効果的だと思います。「一般の住宅規模であれば、1) 基礎部分に「鉄筋コンクリート」、2) 接合部・柱脚部に「鉄」、3) 主の構造躯体に木材である「構造用集成材」「構造用合板」と、それぞれ適材適所として活用することが可能です。そしてそれらを最適な構造計画のもとに「構造計算」を行って設計することが、最もパフォーマンスの高い「耐震住宅」を実現する方法の一つだと言えるのではないでしょうか。

text.後藤俊二(住宅コンサルタント)