What's 耐震

第7回 「ラーメン構造」って何のこと?

2018年10月17日

今回は聞きなれない「ラーメン構造」という言葉についての解説です。

耐震性の高い建物の知識を得る中では、様々な耳慣れない用語を目にするかと思います。この「ラーメン構造」という言葉も少し専門的な用語になりますが、大事な用語でもあります。その意味だけでも知っておくと、これからの家づくりのお役に立つと思います。

「ラーメン構造」は、一般的に「鉄筋コンクリート造」や「重量鉄骨造」などで多く用いられていました。しかし、近年では木造でも可能となり、住宅でも多く使われています。特に、「開放的な空間の実現」と「高い耐震性」を両立させたいとお考えの方には、絶対に覚えておいて欲しい言葉でもあります。

この「ラーメン」という言葉は、実はドイツ語で「額縁」を意味する言葉です。いわゆる絵画などを飾る際に使う「額縁」のことです。太い枠でがっちりと固まっているイメージですね。「ラーメン構造」というのは、構造躯体における「柱」と「梁」の接合している部分に大きな特徴があり、その場合の接合部は「剛接合」ともいわれています。

それはどういうことかと言いますと…
「柱」とは、建物を縦に支えている構造部材です。「梁」とは、横に渡っている構造躯体です。その二つが繋がっている部分を「接合部」と呼びます。そしてその接合部が、ただ繋がっているだけで「ゆるゆる」の状態のケースを「ピン接合」や「ピン構造」と言います。これは、部材と部材が「ピン」で止まっているだけの状態とイメージしていただければわかると思います。ピン接合は繋がってはいるけれど、地震や強風などで家が揺れた場合は、一緒になって揺れてしまいます。

そこで、この場合はこの揺れを止めるために「筋交い」や「ブレス」と呼ばれる斜めの材を適正箇所に入れる必要があるわけです。

一方、柱と梁の接合部が「がっちり」と固定されている状態を「剛接合」といいます。「ピン接合」に比べて接合部がしっかりと固定されているので、地震が起きても揺れにくい特徴があります。もちろん「構造計算」を行うことで耐震性も高く保たれます。

耐震性の領域で言うと「ラーメン構造」が地震に強く、「ピン構造」が弱いというわけではありません。「ピン接合」の構造躯体でも、しっかりと「構造計算」を行って、「筋交い」「ブレス」などを必要な数を、適正に配置すれば地震に強い建物になります。

最も大きな違いは、空間の実現力です。当たり前ですが、柱と梁だけである程度の強度がある建物と、「筋交い」「ブレス」を多く配置させないと耐震性が向上しない建物とでは、開放的な空間の量は大きく変わります。広々としたリビングや外につながる大きな開口窓、ビルトインガレージなども、ラーメン構造だから可能にする空間です。

デメリットとしては、どうしても強い接合部が必要になり、部材も太くなるのでコストアップの要因になることです。このふたつのメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。

1:「ピン接合」=「ピン構造」
部材が細くても可能なので、コストは比較的安価。しかし、耐震性を向上させるには「筋交い」「ブレス」や、「合板」などの耐力壁が多く必要となり、開放的な空間は困難。

2:「剛接合」=「ラーメン構造」
柱と梁だけでも一定の耐力があるので、開放的な空間が安全に可能。デメリットはコストアップにつながること。

この「ラーメン構造」は、以前は鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造を中心に使われていましたが、現在は木造でも可能となり、施設建築はもちろん、一般住宅でも広く使われるようになりました。大手ハウスメーカーでは住友林業さんの「BF構法」がCMなどでも有名です。工務店さんでは「SE構法」がありますね。

この二つは細かいところで違いはありますが、基本は「ラーメン構造」を主とした考え方で、安全に大空間を可能とする部分で共通しています。どちらも構造用集成材を使って、「柱」と「梁」は特殊な金物で接合されています。

他にも「構造用集成材」+「金物接合」の工法は多く見かけますが、その多くは「ピン接合」である場合がほとんどです。よって「筋交い」や「耐力壁」は減らすことは難しく、耐震性の高さと開放的な空間の両立が困難になります。

「広々としたリビングでゆったりと暮らしたい」「南面を全部大きな窓にしたい」「愛車をビルトインガレージに入れたい」という方や、「間口が狭く奥行きが長いけど、できるだけ広々と使いたい」「将来的に大幅な間取り変更をしたい」、なおかつ「耐震性も重要視したい」という方であれば、この「ラーメン構造」が最適です。

木造でも可能な「ラーメン構造」を、これからの家づくりの選択肢に入れてはいかがでしょうか。

text.後藤俊二(住宅コンサルタント)