公開日 : 2026年01月14日

TAISHIN100 Standardsシミュレーションの結果報告

2025年 建築基準法改正に伴うシミュレーション

2025年4月施行の建築基準法改正には、「木造建築物の仕様の実況に応じた壁量基準等の見直し」(令第46条関係)が含まれています。
この改正は、木造建築物が省エネ化に伴って重量化している状況を踏まえ、建物の仕様の実況に応じて必要壁量を算出できるように見直しが行われました。
(建築基準法施行令等が改正され、令和7年4月に施行。1年間、従来の壁量基準等を適用可能とする経過措置が設けられた。)

法改正による壁量基準の見直しが行われたことから、当団体では熊本地震の被災実物件(Y邸)をモデル住宅として壁量計算・許容応力度計算、木造住宅倒壊解析ソフトウェア「wallstat(ウォールスタット)」によるシミュレーションを行いました。


目次

  建築基準法での必要壁率の比較 ▶︎
  品確法での必要壁率の比較 ▶︎
  wallstatによる壁量基準改定に伴うシミュレーション動画 ▶︎
  存在壁量の比較 ▶︎
  耐震等級3での存在壁量の比較 ▶︎
  許容応力度計算の優位性 ▶︎
   ①必要壁率の比較 ▶︎
   ②計算方法の違い▶︎
   ③検討項目の違い▶︎
  2024年能登半島地震におけるシミュレーション結果 ▶︎


建築基準法での必要壁率の比較

旧基準(2000年基準)は「軽い屋根」、現行基準(2025年基準)は「新壁量表計算ツール(多機能版)」での壁量係数の算定を行い、旧基準と比較すると現行基準は、平均で1.41倍となりました。


品確法での必要壁率の比較

品確法仕様規定で旧基準(2000年基準)と現行基準(2025年基準)を比較すると、耐震等級1では、30.5÷27.2=1.12倍、耐震等級2では、38.5÷34=1.13、耐震等級3では、46÷41.1=1.12と、平均で1.12倍となりました。


wallstatによる壁量基準改定に伴うシミュレーション動画

現行の壁量基準にて熊本地震波でのシミュレーションを行った結果、耐震3は倒壊しないという結果になりました。

※CASE5,6,7(許容応力度計算)は、壁量基準の変更はないため、以前のシミュレーション結果に基づく。

※グラフは存在壁量の比較を示す。
※基準法の壁量検定値を1.00とした場合の各CASEの存在壁量

存在壁量の比較

今回の検証結果に基づく7つケースそれぞれについての存在壁量の比較を行いました。

※基準法の壁量検定値を1.00とした場合の各CASEの存在壁量

存在壁量を比較すると同じ耐震等級でも、「許容応力度計算」を行う方が存在壁量は多くなる結果となりました。許容応力度計算には、「梁上耐力壁の低減」や「偏心率によるねじれ補正係数」による影響があるためとなります。


耐震等級3での存在壁量の比較

現行基準法の壁量検定値を1.00とした場合の各CASEの存在壁量の割合

※( )内は各等級での充足率

CASE7構造計算の耐力壁配置


許容応力度計算の優位性

今回検証したモデル住宅(Y邸)では、耐震等級3は倒壊しないという結果になりました。

しかし、「壁量計算」と「許容応力度計算」の存在壁量を比較した時、「許容応力度計算」の方が存在壁量が多いという検討結果になりました。

これはなぜでしょうか。この検討結果を紐解きます。

 ①必要壁率の比較
 ②計算方法の違い
 ③検討項目の違い

① 必要壁率の比較

「壁量計算」と「許容応力度計算」では、必要壁率にどのような違いがあるでしょうか。

上記の表より、法改正後の2025年基準では建築基準法の必要壁率が、品確法仕様規定・許容応力度計算の耐震等級1と同程度となり、必要壁率は、計算方法による差がほとんど無いという事が分かります。

② 計算方法の違い

構造計算は大きく分けると5種類あります。

「許容応力度計算」「許容応力度等計算」「保有水平耐力計算」「限界耐力計算」「時刻歴応答解析」

このうち、限界耐力計算、時刻歴応答解析は超高層ビルや特殊な構造の建物で適用されます。また、「保有水平耐力計算」も高さ31mを超える大規模な建築物で用いられます。
 
「許容応力度計算」「許容応力度等計算」の適用範囲は、下記の通りです。
 
「許容応力度計算」
・階数:3階以上 ・高さ:16m以下 ・延べ面積:300m²超

 
このうち、高さが16m超えの場合は「許容応力度等計算」が必要となります。
 つまり、上記の規模以外の木造建築物の場合は、構造計算が不要という事になります。

構造計算は、規模の大きい建築物で必要になり、高層の建築物になるにつれて上位の計算方法が要求されます。

日本の木造住宅のうち、ほとんどが1、2階建てであり、それら小規模の木造建築物の場合は、構造計算が義務化されていません。

構造計算をしない場合には仕様規定を満たすよう、耐震性については、壁量が一定基準を満たしているか、つり合いよく配置されているかなどを確認する簡易的な計算方法(壁量計算)により作られています。

③ 検討項目の違い

「壁量計算(品確法)」と「許容応力度計算」には検討項目にどのような違いがあるのでしょうか。
比較を下図に示します。

「許容応力度計算」を行う場合は、「壁量計算(品確法)」よりも考慮する事項が多く、より詳細な検討を行っています。

平面、立面的に不整形な建物の場合は、形状に応じたモデル化や耐力の補正を行わないと、正確な安全性の検討ができません。建物の特性を踏まえた適切な構造検討が重要になります。

これまで、①必要壁率の比較、②計算方法の違い、③検討項目の違いについて述べてきました。

2025年基準においては、必要な壁量は「壁量計算」と「許容応力度計算」ではほとんど差が無いにも関わらず、実際に使用する壁量(存在壁量)としては、「許容応力度計算」の方が多くなっています。これは、計算方法の違いや、検討項目の違いにより差が生じており、壁量の違いに現れているように、建物の安全性の違いに現れてくるのではないでしょうか。 


2024年能登半島地震におけるシミュレーション結果

2024年能登半島地震で観測された地震波において、熊本地震の被災実物件をモデル住宅として、木造住宅倒壊解析ソフトウェア「wallstat(ウォールスタット)」によるシミュレーションを行いました。

旧壁量基準

現行壁量基準

以上のシミュレーション結果より、各ケースにおいても大破・倒壊には至りませんでした。

また今後も大地震が発生した場合には、現在の基準で不足がないかを検証するため、シミュレーションによる調査を継続していきます。

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